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布を学ぶtextileStudy

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布をテーマに、糸や織、デザインの秘話などを伝える読みものコンテンツです。
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#デザイン

小林一毅が語る開発秘話 テキスタイルに魅せられて_後編

布を学ぶtextileStudy no.43 今年、フジエテキスタイルと初のコラボレーションを果たした小林一毅さん。長年、グラフィックデザイナーとして平面を中心とするクリエイティブに向き合ってきましたが、その創作の出発点は立体物、ことにテキスタイルにあるといいます。 前編の記事では、そんな彼のライフスタイルや仕事との向き合い方、テキスタイルとの関わりについてインタビューしました。後編では、この春発表した新作についてお話を聞いていきます。 今回、テキスタイル開発に1から携

小林一毅が語る開発秘話 テキスタイルに魅せられて_前編

布を学ぶtextileStudy no.42 今年、フジエテキスタイルと初のコラボレーションを果たした小林一毅さん。長年、グラフィックデザイナーとして平面を中心とするクリエイティブに向き合ってきましたが、その創作の出発点は立体物、ことにテキスタイルにあるといいます。 今回は、そんな彼の営みの根源や向き合い方と共に、コレクション「STORY5」での作品について話を聞きました。 2020年に子どもが産まれて以来、生活とともに働き方も大きく変わったと話す小林さん。会社勤めでは

ヒト、モノ、空間の親和性〈都内オフィスのデザイン事例〉

布を学ぶtextileStudy no.39東京を拠点とするデザインスタジオ「Canuch inc.」(株式会社カヌチ。以下、Canuch)が 手がけた、都内オフィス(以下、B Office)のミーティングルーム兼ラウンジ。シックなトーンでまとめられた内装にシンプルで洗練された家具が配置され、カーテンから漏れる外光が室内へ柔らかな陰影を落とします。 「会議室2部屋と“いい感じ”のスペースをつくってほしい」。 クライアントの抽象的な要望を丁寧な対話で紐解いて導き出した答えは、

パリ装飾美術館が“ミラクル!”と驚嘆 革新のテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.38 今回は前回のつづきです↓ 「炭酸デザイン室」と京都「西陣 岡本」の共同制作により誕生した[光る山]。色鮮やかな森や山々が西陣織金襴で表現された3 反の反物は、2018 年開催のパリ装飾美術館の企画展「ジャポニスムの150 年」で展示されました。 デザインを手がけた「炭酸デザイン室」は、デザイナーの水野智章さん、水野若菜さんよるデザインユニット。[光る山]に描かれた風景は、若菜さんの実家である「立木観音 立木山安養寺」(滋賀県

千二百年の歴史と輝き 西陣織金襴

布を学ぶtextileStudy no.37 古来より京都に伝わる「西陣織」は、美しく染められた色糸で紋様を織り上げていく伝統工芸。絣・綴・経錦・緯錦・緞子など、高度な技法を凝らし、多品種少量生産される高級絹織物として知られています。 古墳時代から織られ始めた「西陣織」の中でも金糸、箔糸を使用する「西陣織金襴」は風合いが一段と豪華で、約1200 年前の平安時代には盛んに織ら れるようになります。浄土信仰の隆盛により、西陣織金襴は「極楽」を表現する絢爛な荘厳具として神社仏閣

フィンランドの日常を切り取る 吉澤葵さんの世界 

布を学ぶtextileStudy no.36 今回は、フィンランド・ヘルシンキ在住のテキスタイルアーティスト・デザイナー、吉澤葵さんをご紹介します。 北欧の湖畔に自生する葦が幻想的なシルエットで描かれる[アシベ]。 ナチュラルな素材感のベース地に浮かび上がるジャカート織、その柔らかな手触りとドレープ性が魅力のテキスタイルです。 デザインを手がけたのは吉澤葵さん。 [アシベ]以外にも、空から舞い降りる雪がモチーフの[ルミ]、木の枝を描いた[プー]など、フィンランドの自然から

デザイナーが語る、幾何柄にしのばせた遊び心

布を学ぶtextileStudy no.32シャープな幾何柄がモダンでスタイリッシュな[スペクトル]。じっと眺めていると、奥行きのある立方体にも見えてくる“だまし絵”のような不思議な味わいがあります。 デザインを手がけたのは、テキスタイルデザイナーの弘重宣子さん。 フジエテキスタイルとコラボレーションを始めた1990年代から現在まで、魅力あふれる多くの作品を発表してきました。 [スペクトル]のコンセプトは、空間性と3D。 「空間性を感じる立体的な幾何柄デザインを考えてほし

織りが奏でる色のグラデーション

布を学ぶtextileStudy no.21時を告げる鐘の音が鳴り響き、ゆっくりと消えていくさまを6色の繊細なグラデーションで表現した[トキカネ]。 やわらかな余韻を残しながら靄がかかったように移り変わってゆく色は、プリントではなく、先染めの糸を使用した緻密な織りの設計によって生まれます。 約100センチのレピート(=リピート。生地の柄が何センチ間隔で繰り返されるかの単位として表記しています。)のなかに透明感のある6色の細い糸を、本数を変えながら織り込んでいます。 糸自体

自然の情景を室内に取り込む

布を学ぶtextileStudy no.20流れ落ちる水の風情はそのままに、凍りついた滝の静謐な美しさを表現した[フローズンホール]。 日本の感性から紡ぎ出された繊細なデザインを、イタリアの工場の技術で実現したテキスタイルには、織りや糸の豊かな表情がふんだんに散りばめられています。 凹凸感のある凝った織り組織に、生地裏で糸を断ち切るバックカットの技 法を大胆に取り入れています。 ランダムに透け感をもたせることで、滝の風情を表現。織り込んだ光沢糸の効果も相まって、流れ落ちる

超収縮糸が叶えた立体プリーツ    テキスタイルの隠れた名作

布を学ぶtextileStudy no.17整然と繰り返されるプリーツの繊細な陰影と、凜とした表情が美しい[オウトツ]。 遠目に見ると無地調のストライプ柄のようにも見えますが、タテのラインに立体感がある、とても珍しいプリーツ状のテキスタイルです。 プリーツに立体感をだすのは難しい技術ですが、熱によって大幅に縮む特殊な「超収縮糸」と呼ばれる糸を使い、その性質を巧みにコントロールすることで、縮んだ部分が均一な凸状に盛り上がり、端正なプリーツになるようにつくられています。 最

植物の生命力がほとばしる 炭酸デザイン室のテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.14生命力あふれる多様な植物が、生地全面を覆い尽くすように細密に描かれた[ナティフ]。 勢いよく伸び広がる草花や木々の葉のモチーフは、どことなくあたたかみのあるユーモラスなタッチで描かれています。 デザインを手がけたのは2014 年に水野智章さん、井野若菜さんご夫妻によって設立された「炭酸デザイン室」。 滋賀の自然豊かな環境にアトリエを構え、「いつもの暮らしにシュワッとした刺激を」をテーマに、身近な自然や日々の暮らしから感じ取るものを

インテリアコーディネートの幅が広がる新鮮な色味

布を学ぶtextileStudy no.13[エディット]は、さまざまなコーディネートに取り入れることを想定してつくられた無地調のテキスタイルです。 フジエテキスタイルではこれまでも彩度の高いカラーも持つ定番の多色無地を展開していますが、[エディット]は従来の多色無地とはひと味違うブラックベリー、ブルーグリーンといった深みのある色、ラベンダー、ライトブルーなどの淡い色を含むグレード感のある全7色を展開しています。 いずれも、空気が澄み渡った早朝の静かな森の中をイメージした

かわいいテキスタイルとは?ー不織布リボンと後染め技法ー

布を学ぶtextileStudy no.9コットンのようなナチュラルな風合いのベースクロスに、透け感のある不織布リボンをあしらったキュートな表情の[ポーラーアイス]。 フジエテキスタイルの数ある生地のなかでも「かわいい!」と人気の一枚です。 刺繍ステッチで縫いとめた細いリボンが清楚で可憐なかたちをつくります。花のようにも、星のようにも、雪の結晶のようにも見えるモチーフです。 リボンは、不織布でできていて、折り紙のように折りたたみながら上から縫い糸でたたいて止めていきます。

イタリアの「クラシック」と「モダン」の協奏を楽しむ

布を学ぶtextileStudy no.2ミケーレ・アロイス アルプスを望む北イタリアの避暑地・コモにアトリエを構え、 モダンとクラシックを融合させた独創的なテキスタイルを生み出す気鋭のデザイナー、ミケーレ・アロイス。 世界中の人々に向けて、創造性と独自性のうえに新旧の技術を融合したハイエンドなファブリックを提供しています。 フジエテキスタイルとミケーレ・アロイスは。2019年よりコラボレーションを開始。 華やかな夜会を彩る人々の装いに触発されて「コレクション・ガラ」が生