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布を学ぶtextileStudy

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布をテーマに、糸や織、デザインの秘話などを伝える読みものコンテンツです。
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#インテリア

前例なきグラデーションへの挑戦―理想を叶えた印刷のプロ集団

布を学ぶtextileStudy no.40 ボトムからトップへ移ろう美しいグラデーションが魅力のテキスタイル、[ナミノアヤ]。波によってつくられる水面の模様がデザインされた涼やかなトランスペアレンスです。ベースクロスに施された不規則なシワ加工が生地に立体感を生み、描かれたグラデーションにも豊かな陰影を与えています。 折り目をつけた生地に繊細なグラデーションを描き出すという、ハイレベルなカラー表現を手がけたのは、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社(以下、日本写真印刷

ヒト、モノ、空間の親和性〈都内オフィスのデザイン事例〉

布を学ぶtextileStudy no.39東京を拠点とするデザインスタジオ「Canuch inc.」(株式会社カヌチ。以下、Canuch)が 手がけた、都内オフィス(以下、B Office)のミーティングルーム兼ラウンジ。シックなトーンでまとめられた内装にシンプルで洗練された家具が配置され、カーテンから漏れる外光が室内へ柔らかな陰影を落とします。 「会議室2部屋と“いい感じ”のスペースをつくってほしい」。 クライアントの抽象的な要望を丁寧な対話で紐解いて導き出した答えは、

フィンランドの日常を切り取る 吉澤葵さんの世界 

布を学ぶtextileStudy no.36 今回は、フィンランド・ヘルシンキ在住のテキスタイルアーティスト・デザイナー、吉澤葵さんをご紹介します。 北欧の湖畔に自生する葦が幻想的なシルエットで描かれる[アシベ]。 ナチュラルな素材感のベース地に浮かび上がるジャカート織、その柔らかな手触りとドレープ性が魅力のテキスタイルです。 デザインを手がけたのは吉澤葵さん。 [アシベ]以外にも、空から舞い降りる雪がモチーフの[ルミ]、木の枝を描いた[プー]など、フィンランドの自然から

箱根の新しい過ごし方 貸切景観とモダンインテリア

布を学ぶtextileStudy no.35 今回は、神奈川・箱根の貸切別荘に使われたテキスタイルをご紹介します。 箱根を代表する観光名所のひとつ、仙石原ススキ草原から徒歩約5分に位置する「NOIE HAKONE SENGOKUHARA」。 MUJI HOTEL、新宿の温泉旅館「由縁」など、さまざまなホテルを設計・運営するUDS株式会社が手がけたバケーションレンタル(貸切別荘)です。 開発コンセプトは「Gift & Style」。1,600平米の広い土地にゆったりと建て

顔をうずめたくなるベルベット

布を学ぶtextileStudy no.34 上品なツヤのベルベットに浮かぶ、トラディショナルなヘリンボーン柄。 [カグラ]という名のテキスタイルは、シンプルな意匠ながら、豊かな質感と風合いが上質さを伝える一枚です。 ゴージャスでエレガントな印象をもつベルベットは、毛足の長さにともなう生地の立体感が美観を創出し、艶やかな光沢と色の深み、陰影などを演出できます。 インテリアテキスタイルにおいては、物性面の安定性やメンテンナンスの簡便さからポリエステル製のベルベットが多用さ

瞬間の美を写しとる 墨流しのテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.33和紙からうまれた生地に映し出される流麗なる波模様。 [シュンコク]は、京友禅の伝統技法「墨流し染」でデザインされたテキスタイルです。 墨流し染とは 「墨流し」の起源は平安時代。 川に墨を垂らし、偶発的に生まれる波形や渦模様の変化を楽しんだといわれる貴族文化にさかのぼります。 遊びを起点とした「墨流し」は、やがて詩歌を詠む台紙の装飾として利用されるようになり、意匠性が高められていきました。 その技法が布帛の染色に応用され始めたの

デザイナーが語る、幾何柄にしのばせた遊び心

布を学ぶtextileStudy no.32シャープな幾何柄がモダンでスタイリッシュな[スペクトル]。じっと眺めていると、奥行きのある立方体にも見えてくる“だまし絵”のような不思議な味わいがあります。 デザインを手がけたのは、テキスタイルデザイナーの弘重宣子さん。 フジエテキスタイルとコラボレーションを始めた1990年代から現在まで、魅力あふれる多くの作品を発表してきました。 [スペクトル]のコンセプトは、空間性と3D。 「空間性を感じる立体的な幾何柄デザインを考えてほし

色を取り入れるには?外部環境との調和

布を学ぶtextileStudy no.31東京都内、多摩川のほど近くに立つマンションの一室。 小割にされていた住戸の壁がリノベーションによって取り払われ、南北に風が抜ける開放的な空間へと生まれ変わりました。 新しい部屋で“柔らかな壁”を演出するのは、フジエテキスタイルのコレクション。玄関土間と水回りスペースを仕切るレンガ色の[エマ]、広い開口には[キヌリー](現在廃番 代替品:ヤム)が使われています。 設計は「小坂森中建築」。戸建・集合住宅や、半公共的な施設を手がけてい

ネックレスをカーテンアクセサリーに

布を学ぶtextileStudy no.30 繊細なレース編みのように形作られたカーテンタッセル※。 こちらは刺しゅうの技法を使って作られています。 ※カーテンタッセル:カーテンを束ねる際に使用する帯や房状のもの。 装飾性のあるものも普及している。 一般的に刺しゅうというと土台となる生地に糸を刺しその生地を彩るもので、このような糸だけでできた商品が連想されることは、まずありません。 そんな既成概念をくつがえすものづくりは、とあるファクトリーブランドとの出会いから始まり

エレガントとナチュラル、異なる表情のカラーボイル

布を学ぶtextileStudy no.27今回は同じ透けものでも印象が全く異なる、2種類の生地を紹介します。 1つはヴェールをまとったようなこまかな光沢が優美な[ハウ]。 もう1つは北欧風のコットンライクな素材感が特徴の[キートス]。 どちらも透け感のあるカラーボイルで、ポリエステル100%で出来ています。素材は同じ、タテ糸も同じような細くしなやかな糸を使っているのですが、一方はエレガント、もう一方はナチュラル。 印象が大きく異なるのはなぜなのか?  理由はヨコ糸のセレ

一枚の布に多彩な糸使い

布を学ぶtextileStudy no.18シンプルモダンなヨコストライプのデザインのなかに、個性的な糸を多く織り込んだ贅沢な[カルタ]。 フジエテキスタイルのコレクションSTORY のなかでも、こだわりに満ちた上質感あふれるテキスタイルです。 白のボーダー部分は和紙のような風合いの不織布テープを揺らがせながら織り込んだクラフト感のある層。ライトグレーのボーダー部分は光沢のある糸と黒の混じった糸を織り込んで麻調のナチュラルな風合いに。 強い光沢を放つシルバーのボーダー部分

超収縮糸が叶えた立体プリーツ    テキスタイルの隠れた名作

布を学ぶtextileStudy no.17整然と繰り返されるプリーツの繊細な陰影と、凜とした表情が美しい[オウトツ]。 遠目に見ると無地調のストライプ柄のようにも見えますが、タテのラインに立体感がある、とても珍しいプリーツ状のテキスタイルです。 プリーツに立体感をだすのは難しい技術ですが、熱によって大幅に縮む特殊な「超収縮糸」と呼ばれる糸を使い、その性質を巧みにコントロールすることで、縮んだ部分が均一な凸状に盛り上がり、端正なプリーツになるようにつくられています。 最

上質な麻で心やすらぐ空間をつくる

布を学ぶtextileStudy no.8宵闇に沈んだ東の空がうっすらと白みはじめ、しだいに色を帯びていく‥。明け方の空の色や凛とした空気感を、のびやかなパネルがらで表現した[ヨアケ]は、上質な麻の原産地として知られるフランス・ノルマンディ産の麻を使用したハーフトランスペアレンス※1です。 ※1ハーフトランスペアレンスとは、厚手の生地(ドレーパリ―)と薄手の生地(トランスペアレンス)の間の透け具合の生地を指します。 カーテンの場合、2重にせず1枚がけにしたい方等に好まれる傾

イタリアの「クラシック」と「モダン」の協奏を楽しむ

布を学ぶtextileStudy no.2ミケーレ・アロイス アルプスを望む北イタリアの避暑地・コモにアトリエを構え、 モダンとクラシックを融合させた独創的なテキスタイルを生み出す気鋭のデザイナー、ミケーレ・アロイス。 世界中の人々に向けて、創造性と独自性のうえに新旧の技術を融合したハイエンドなファブリックを提供しています。 フジエテキスタイルとミケーレ・アロイスは。2019年よりコラボレーションを開始。 華やかな夜会を彩る人々の装いに触発されて「コレクション・ガラ」が生