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布を学ぶtextileStudy

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布をテーマに、糸や織、デザインの秘話などを伝える読みものコンテンツです。
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#テキスタイルデザイン

デザイナーが語る、幾何柄にしのばせた遊び心

布を学ぶtextileStudy no.32シャープな幾何柄がモダンでスタイリッシュな[スペクトル]。じっと眺めていると、奥行きのある立方体にも見えてくる“だまし絵”のような不思議な味わいがあります。 デザインを手がけたのは、テキスタイルデザイナーの弘重宣子さん。 フジエテキスタイルとコラボレーションを始めた1990年代から現在まで、魅力あふれる多くの作品を発表してきました。 [スペクトル]のコンセプトは、空間性と3D。 「空間性を感じる立体的な幾何柄デザインを考えてほし

石のようなテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.24布というしなやかな素材で石のような質感を表現したい。 そんなユニークな発想から生まれたテキスタイルが、無地調の遮光ドレーパリー[ライオライト]です。 生産は北陸産地の工場で行っています。北陸は絹織物で栄えた地であり、現在もその流れを汲んで高密度・細番手の繊細な加工を得意とする工場が多い地域。 なかでもフジエの協力工場は、欧米の有名インテリアブランドとも取引があり、そのクオリティの高さは世界が認めるレベルです。 「遮光でこれまでに

幻想的なモアレが空間をエレガントに

布を学ぶtextileStudy no.23大ぶりの花モチーフが生地全体を流れるように覆う優美なドレーパリー[フウガ]。 モチーフの花を描いたのは、グラフィックアーティストの牧かほりさん。 植物や人間にフォーカスし、グラフィック作品を中心に映像や空間演出など幅広い分野で、大胆で生命力に溢れる作品を発表されている注目のクリエイターです。 [フウガ]のモチーフは、ユリの女王ともいわれるカサブランカのもつ 上品さとダイナミックさをアレンジしたものとか。 光沢の強いゴールドの糸で織

織りが奏でる色のグラデーション

布を学ぶtextileStudy no.21時を告げる鐘の音が鳴り響き、ゆっくりと消えていくさまを6色の繊細なグラデーションで表現した[トキカネ]。 やわらかな余韻を残しながら靄がかかったように移り変わってゆく色は、プリントではなく、先染めの糸を使用した緻密な織りの設計によって生まれます。 約100センチのレピート(=リピート。生地の柄が何センチ間隔で繰り返されるかの単位として表記しています。)のなかに透明感のある6色の細い糸を、本数を変えながら織り込んでいます。 糸自体

自然の情景を室内に取り込む

布を学ぶtextileStudy no.20流れ落ちる水の風情はそのままに、凍りついた滝の静謐な美しさを表現した[フローズンホール]。 日本の感性から紡ぎ出された繊細なデザインを、イタリアの工場の技術で実現したテキスタイルには、織りや糸の豊かな表情がふんだんに散りばめられています。 凹凸感のある凝った織り組織に、生地裏で糸を断ち切るバックカットの技 法を大胆に取り入れています。 ランダムに透け感をもたせることで、滝の風情を表現。織り込んだ光沢糸の効果も相まって、流れ落ちる

超収縮糸が叶えた立体プリーツ    テキスタイルの隠れた名作

布を学ぶtextileStudy no.17整然と繰り返されるプリーツの繊細な陰影と、凜とした表情が美しい[オウトツ]。 遠目に見ると無地調のストライプ柄のようにも見えますが、タテのラインに立体感がある、とても珍しいプリーツ状のテキスタイルです。 プリーツに立体感をだすのは難しい技術ですが、熱によって大幅に縮む特殊な「超収縮糸」と呼ばれる糸を使い、その性質を巧みにコントロールすることで、縮んだ部分が均一な凸状に盛り上がり、端正なプリーツになるようにつくられています。 最

艶のある糸で織り込んだ流麗な草花たち 山本祐布子さんのデザイン

布を学ぶtextileStudy no.16穏やかな色調のアンティークローズの生地いっぱいに、艶やかな糸で散りばめるように草花柄を織り込んだ[ユヌフォレ]。 フジエテキスタイルとイラストレーターの山本祐布子さんとのコラボレーションから生まれた一枚です。 やさしいタッチでこまやかに描かれた植物のモチーフは、山本さんが春先に房総の山を歩いた際に目にとまったモミの新芽やユキノシタ、ミツマタ、シダなどから得たインスピレーションをもとに描かれています。 写真はライトグレーのリボンを

金属的な布×スチールシェードの照明 個性が光る異素材の共鳴

布を学ぶtextileStudy no.15今回ご紹介する[オリゾン]という生地は、布でありながら金属的な、ステンレスメッシュのような素材感を目指して開発されました。 テキスタイルの新しい可能性を感じて頂ける生地です。 デザインはごくシンプルなヨコストライプ。輝きの強い糸を高密度に織り込み、シャープな印象を持たせています。 ベース部分にはタテ糸とヨコ糸の隙間を等間隔に空けながら織り上げるモックレノという技術を使い、拡大して見ると四角形の隙間が整然と並ぶ構造になっています。

植物の生命力がほとばしる 炭酸デザイン室のテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.14生命力あふれる多様な植物が、生地全面を覆い尽くすように細密に描かれた[ナティフ]。 勢いよく伸び広がる草花や木々の葉のモチーフは、どことなくあたたかみのあるユーモラスなタッチで描かれています。 デザインを手がけたのは2014 年に水野智章さん、井野若菜さんご夫妻によって設立された「炭酸デザイン室」。 滋賀の自然豊かな環境にアトリエを構え、「いつもの暮らしにシュワッとした刺激を」をテーマに、身近な自然や日々の暮らしから感じ取るものを

京都の職人技 手捺染のテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.5 極細の糸で織り上げた生地「オーガンジー」に不規則な縮みを施し、墨汁を滴らせたような滲みのある水玉を散りばめたプリントレース。 着物の帯揚げなどによく見られる「絞り染め」にインスピレーションを得た[アワモク]というこの生地は、若手のテキスタイルデザイナー3 名からなる pole-poleとフジエテキスタイルのコラボレーションによって誕生しました。 [アワモク]は、型友禅の流れを受け継ぐ、京都の手捺染専門の工場でつくられています。オ