楽しく、自由に、しなやかに テキスタイルの可能性を広げる
布を学ぶtextileStudy no.10
今回は、ファブリックデザイナーの佐藤未季さんが手がけた保育施設のテキスタイルを紹介します。
透け方、縫い方、かたち。様々な要素によって空間の可能性が広がります。
写真は横浜中華街の子ども園。子どもたちが帰ったあとはカルチャースクールとして大人が集う場にもなる施設です。
限られた空間にたくさんの備品を収められるよう収納棚が工夫されています。
最も天井に近い円状の棚の中には照明が取り付けてあり、丈の短いカーテンが目隠しとランプシェードを兼ねています。
たっぷりと取ったヒダが、かわいらしく楽しい装飾に。
点灯すると暗かった天井付近に大きな光の輪が浮かび上がります。
こちらは学校の教室を改修した大阪の学童保育施設。
放課後のひととき、子どもたちはここで遊んだり、宿題をしたり、本を読んだり、思い思いに過ごします。
掃き出し窓を覆うカーテンの向こう側には、窓にそって中庭を望むカウンター席がしつらえられており、カーテンはテーブルのあるメインスペースとの境界をゆるやかに仕切るパーテーションの役割を果たします。
カーテンを閉めていていても、透け感のある布を通して外光がやわらかく取り込まれ、室内が明るく保たれています。
これらを手がけたのはファブリックデザイナーの佐藤未季さん。
どちらの施設も、フジエテキスタイルの[イマ] のライトイエローとシンプルな無地のボイル[フィット]、2種のトランスペアレンスを重ね使いしています。
「[イマ]は、発色の鮮やかさ、スポーティな素材感が子どもたちの空間にぴったりだと思いました。大阪の学童保育はおもに夕方以降に利用されます
し、中華街の施設は開口が少ない物件。どちらも内部空間をできる限り明るくしたいと考えました」と佐藤さん。
佐藤未季さんは日本の大学・大学院で建築を学んだのちオランダに渡り、おもにランドスケープデザインやインテリアアーキテクチャーを専門とする世界的なデザイナー・Petra Blaisseのもとで建築にかかわるファブリックデザインを学んだ稀有な経歴をお持ちです。
現在は建築家・隈研吾氏が率いる設計事務所でファブリックデザインを担当するほか、個人での活動もなさっています。
「テキスタイルのなかでも特にカーテンはおもしろい」と言う佐藤さん。「簡単な操作で空間を劇的に変えられる大胆さ・のびやかさがあり、風に揺れ光をやさしく取り込む繊細さもあります。カーテンは建築内外の環境をコラージュして繋げるような役割を担っているのだと思います」。
佐藤さんが作り出す、テキスタイルを楽しく機能的に取り入れた空間は、思いがけない使い方や新鮮なアイデア、驚きや発見、気づきにあふれ、テキスタイルというしなやかな素材のさらなる可能性や豊かさをあらためて感じさせてくれます。
光も空気も心地よく通り抜ける
軽やかなリバーシブルメッシュ
[イマ]は、全面に丸い穴が連なるニットのデザインがユニークなリバーシブルのテキスタイル。
ナイロン製のカーシートの素材に着想を得て、ポリエステルで開発しました。ニットならではの伸び縮みを改良し、厚みを抑えて縫いやすく進化させています。表と裏で組織と色を変えたダブルラッセルのメッシュになっており、透過性、通気性、ドレープ性がよく、動きが軽やか。
ヒダを寄せたり、風に揺れると、裏の色が表から見え隠れするなど、見る角度や動きによって色が変化するおもしろさがあります。
全5配色。店舗のディスプレイや間仕切り、オフィスや公共施設のパーテーションにおすすめです。
取材協力:佐藤未季さん