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色を取り入れるには?外部環境との調和

布を学ぶtextileStudy no.31

東京都内、多摩川のほど近くに立つマンションの一室。
小割にされていた住戸の壁がリノベーションによって取り払われ、南北に風が抜ける開放的な空間へと生まれ変わりました。

新しい部屋で“柔らかな壁”を演出するのは、フジエテキスタイルのコレクション。玄関土間と水回りスペースを仕切るレンガ色の[エマ]、広い開口には[キヌリー](現在廃番 代替品:ヤム)が使われています。

設計は「小坂森中建築」。戸建・集合住宅や、半公共的な施設を手がけています。

「多摩川の一室」
設計 :一級建築士事務所 小坂森中建築 企画 :トヨタホーム東京+Aプロジェクト室(大島滋)

リノベーションで重視するのは、「既存の建物との関係を大切にすること。そして、外に向かって広がりが感じられるような設計を心がけています」と森中さん。
ここに紹介する『多摩川の一室』は、片廊下形式の建物の角部屋で、プライバシーが守られた三面バルコニーを有するのが特長です。
「バルコニーに接する三面の窓を同時に体験できる広々とした空間の中で、日の移ろいを刻々と感じながら豊かな時間を紡いでいけるような住まいづくりを目指しました」。

既存の建物との関係を大切に、との想いは、住戸内のみならず周辺環境との関連性を重んじる設計スタイルにもつながっています。
ある戸建住宅の現場では、色見本を片手に周辺住宅の外壁の色を調査し、調和するトーンと実現したいイメージの整合性を追求しました。

『多摩川の一室』の玄関土間に並べた赤いレンガタイルも、マンションの共用エントランスに使われているレンガタイルに想を得たもの。
タイル以外にも、赤い非常用の押ボタン、丸い壁付照明など、住戸内に残されていた魅力的な要素と新たな試みを違和感なく調和させ、マンション全体を包む懐かしい雰囲気と関係づくように設えました。

玄関土間のレンガ
マンションの共用エントランス


土間のタイルと色調を揃えたドレーパリーも、空間構成の重要な要素のひとつ。「周囲のものと色や質感を合わせることで、インパクトのある色味もしっくりと空間になじみます。共用エントランスだけでなく建物内にも点在するレンガタイルの色が、そのまま住戸内まで続くようなイメージを意識しました」。

レンガとリンクする[エマ]は、シルク調の光沢感とシャンブレーの玉虫効果が美しいロングセラー商品。
独特の張りをもつ生地・タフタはフォーマルドレスなどに好んで使われ、日本ではインテリアテキスタイル、とりわけカーテンで使われることは多くありませんでした。
フジエテキスタイルでは2000 年の発表以来、薄手ドレーパリーとして販売するほか、ベッドやソファのスロー、クッション生地として幅広く提案し、全35色の豊富なカラーで展開しています。

「建築素材と関係させやすい素材感のテキスタイルを見つけられるのがフジエテキスタイルの魅力」と話す森中さん。「光沢や艶が豊かに表現され、表と裏、どちらも美しい『エマ』は、間仕切りに最適でした」。

ウィンドートリートメントに使用した白のテキスタイルは、光を取り入れながらも透け過ぎず、一枚で使用できる生地感が選定のポイント。

「リノベーション物件では、躯体の荒々しさや窓のかたちなどが空間の印象に制約を与えてしまうことが少なくありません。白の薄手ドレーパリーがそうしたリスクをカバーしながら光源も担保し、大開口の窓のような広がりのある見せ場を演出してくれました」。

建築の観点から見るカーテン、テキスタイルの優位性は、「なんといってもその柔らかさにある」という森中さん。
建築部材では表現しづらい“柔らかさ”を生む大切な要素として、テキスタイルを含めて提案する機会が増えているそうです。
「窓から吹き込む風がカーテンを揺らし、空気の流れを視覚的にも感じられる⸺そのようなしなやかな表現は、テキスタイルだから実現できるものと考えています」。


物件名: 多摩川の一室  
設計者 :一級建築士事務所 小坂森中建築 
企画 トヨタホーム東京 + Aプロジェクト室(大島滋)

取材協力:小坂森中建築


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