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道東の自然とともに歩むレストランとテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.26

北海道・中標津の郊外に建つレストラン「フェネトレ」。隣接する森には水源地があり、ヤマメが棲み、クレソンが自生する清らかな沢が流れています。
2020 年3 月に中標津の市街地から移転。「素朴さのなかに豊かさがある道東の自然のなかで、自分なりのやり方で、表現としての料理を提供したい」というシェフ松村聡彦さんの想いを叶えるのにふさわしい環境にあります。

料理は地産の食材を中心としたフレンチスタイルのコース料理。和食にも長く携わっていたシェフだけに、供される一皿には日本料理へのリスペクトも盛り込まれた創意工夫が満ちています。

「道東には“何もない” がある。そこが魅力です」と奥様の絵梨香さん。
「冬は厳しい土地ですが、それも含めてお皿にのせる。この土地から刺激を受け、創作意欲を掻き立てられています」とシェフ。
移転前の2017 年にミシュラン北海道で一つ星を獲得したこのお店には、地元や近郊だけでなく遠方から訪れるお客さまも少なくありません。

店名のフェネトレとはフランス語で「窓」を意味し、店内の窓がちょうど額縁となって、季節ごとに変わる森の風景を映しだします。
店内はグレーを基調にしたシンプルでモダンな内装。天窓から光が差し込む空間に、森の木々の葉や季節の素朴な野花を糸で吊りさげる趣向は、店内
と屋外の風景をひと連なりに感じてもらいたいという奥様のアイデアだそう。

そんなお店の一角、一つのテーブル席を個室風に使うための間仕切りとして、フジエテキスタイルの「ヨアケ」のグレー色が使われています。「ヨアケ」はおおらかな3 色ストライプのパネル柄デザインで、その名の通り夜明けの情景をイメージしたハーフトランスペアレンス。
麻のトップ糸を使用しているため色合いにニュアンスがあり、色の境目部分に織り込んだシルバーのラメ糸が繊細なアクセントになっています。

個室を仕切るカーテン ヨアケ(グレー色)

奥様が布好きということもあり「個室を必要とするお客さまのための空間を考えたとき、完全に閉じ切ってしまうのではなく、ファブリックを使って半分仕切り、さりげなく視線を遮られればと考えました」。

とはいえ「ヨアケ」はご自身で選んだのではなく、家族ぐるみでおつきあいのある、内装に造詣の深いお知り合いから「ここに使うなら絶対これがいい」と贈られたものだとか。
 「このお店のためにオリジナルで作られたのではないかと思うほど、あまりにもお店にぴったりで驚きました。いつも、何度見ても素敵だなと感じています」と奥様。「生地の風合いが素朴なのに、やわらかさやあたたかみがあり、私たちの求める雰囲気に合っている。間近で見るといろいろな細かな要素が入っているのに、離れてみるとそれらがやんわりと緩和されるよう計算された深みのある色のグラデーション。夜と日中で人影の見え方が違い、
表情が変わるところも気に入っています。この布一枚でこのお店が伝えたい空気感を表現してくれていると思います」とシェフ。

お店では、料理を盛る器を作家さんに作ってもらうことが多いそうですが、「既製のものでこれほどしっくりくるものに出会えるとは・・・。ジャンルは違うけれど、ものづくりをする者としてこのカーテンから刺激をも
らっています」。
レストランフェネトレとともに、味わいを増しながら長く愛され続けていってほしいです。


取材協力:フェネトレ


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