艶のある糸で織り込んだ流麗な草花たち 山本祐布子さんのデザイン
布を学ぶtextileStudy no.16
穏やかな色調のアンティークローズの生地いっぱいに、艶やかな糸で散りばめるように草花柄を織り込んだ[ユヌフォレ]。
フジエテキスタイルとイラストレーターの山本祐布子さんとのコラボレーションから生まれた一枚です。
やさしいタッチでこまやかに描かれた植物のモチーフは、山本さんが春先に房総の山を歩いた際に目にとまったモミの新芽やユキノシタ、ミツマタ、シダなどから得たインスピレーションをもとに描かれています。
写真はライトグレーのリボンをあしらい、ゆったりと裾をブレイクさせたスタイル。甘くなりすぎないフェミニンスタイルは、寝室や趣味のお部屋はもちろん家族が集うリビングに取り入れても、空間を心地よいやさしさで包んでくれます。
「ものをつくるときに一番大切にしているのはどのように使われるのか、ということ。自分自身を含め、使う人のことを想像しながら、インテリア空間のなかでどう見えるかというゴールを見据えてつくります」という山本さん。
「カーテンは1年を通して使うものなので、季節を限定しない抽象化したモチーフとして描きました。ふとした瞬間に動きを感じたり、その日の気分や光の入り方でいつもと違う発見があったり。そんなテキスタイルであればい
いなと思っています」。
なめらかな生地に流れるように描かれた植物たちは、山本さんが意図したとおり、しなやかな動きを感じさせてくれます。
差し込む光の加減やカーテンの動きによって光沢のある糸が艶めき、見え方が変化するのも魅力です。
ライフスタイルにも注目
イラストレーターの山本祐布子さん
本の装丁や広告、プロダクトデザインなど幅広い分野で活躍する山本祐布子さん。
現在は、千葉の山間に移り住み、ご夫婦で営む「薬草園蒸留所mitosaya」でお茶やシロップ、食の部門を担当しながら、絵を描く仕事をされています。
自然豊かな環境で暮らし、植物を描くことが多い山本さんだけに、自然を見つめる眼差しには深いものが。
「自然はとどまることなく絶えず変化しています。私が出合った植物たちも、たまたま春先にこちらが気づいただけで、年を通してずっとそこにあって、芽吹き、花が咲き、枯れ、というふうに大きなサイクルのなかで変化しつづけている。そんなふうにつねに息づいている自然の“一瞬”を捉え、表現できればと思っています」。
薬草園の健やかな植物、犬や猫、鶏たちに囲まれ、二人の子どものお母さ
んとしても多忙ながら充実した日々を楽しんでおられる山本さん。
やさしいタッチのイラストとともに、自然と歩調を合わせたその豊かなライフスタイルにも注目が集まっています。
取材協力:山本祐布子さん