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瞬間の美を写しとる 墨流しのテキスタイル

布を学ぶtextileStudy no.33

和紙からうまれた生地に映し出される流麗なる波模様。
[シュンコク]は、京友禅の伝統技法「墨流し染」でデザインされたテキスタイルです。

墨流し染とは

「墨流し」の起源は平安時代。
川に墨を垂らし、偶発的に生まれる波形や渦模様の変化を楽しんだといわれる貴族文化にさかのぼります。
遊びを起点とした「墨流し」は、やがて詩歌を詠む台紙の装飾として利用されるようになり、意匠性が高められていきました。

その技法が布帛の染色に応用され始めたのは、江戸時代中期。
京都における「墨流し染」は、着物の生地に模様を施す技法が生まれた明治期以降、時代の変化に即した改良を重ねながら現代まで受け継がれてきました。

水を張ったプールに染料を浮かべ、風を送り水面に縞模様をつくる


現在、京友禅の伝統技法のひとつとして確固たる地位を確立する「墨流し染」。その魅力は、なんといっても、この世に二つとない柄に出会える“一期一会”の喜びです。

水面に滴下する染料の位置や量、それを流す方向、風の送り方など、微妙なサジ加減ひとつで波形は自在に変化します。


仕上がりを想像しながら広い水槽に模様を創るのは職人の経験と勘が頼り。それを生地に写し取る作業は、ほんの一瞬、まさに“瞬刻”の勝負です。

水面の模様を写し取る際、生地のたわみが命取りとなるため、「伸子(しんし)」と呼ばれる道具でぴんと張り、職人が息を合わせて水面へ浸します。

一瞬で水面の模様を写しとる


工程のすべてに繊細な神経と熟練した技が要され、その作業を許される
のはごくわずかな職人だけ。
フジエテキスタイルでは、「墨流し染」の名工・薗部正典氏の技法を継承した職人たちへ[シュンコク]の染色を託し、完全受注生産で一枚一枚丁寧に手作りしています。


商品化への道のり

卓越した技術を要する「墨流し染」とのコラボレーション。

商品化までの道のりは、苦難の連続でした。
元々は着物に使われることの多い墨流し染。それに比べてカーテンの面積は大きく厚みも異なります。
使用する生地も風合いを高めるために和紙や麻を織り込み、さらにシワ加工がされたもの。
誤魔化しの効かない墨流し染の世界で、商品化できるのか。
さまざまなリスクと隣り合わせで開発をすすめました。

同じ素材の生地でも織りや組成する糸の種類によって染まりやすさが異なり、また、季節や気候にしたがって色の濃さも変化します。

何度も試作を繰り返し、職人たちとともに長い年月を重ねて完成しました。


“良いもの” を追求し、なければ一から作る

インテリアテキスタイルの先駆者として大切にしてきた、この考えを貫いたからこそ叶った実験的な試みです。
唯一無二、極上の一点ものを手にする喜びが、人生を豊かに彩ります。

最後に、墨流し染を含めた2022年10月28日に発表した新作コレクションを動画でご紹介します。



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