パリ装飾美術館が“ミラクル!”と驚嘆 革新のテキスタイル
布を学ぶtextileStudy no.38
今回は前回のつづきです↓
「炭酸デザイン室」と京都「西陣 岡本」の共同制作により誕生した[光る山]。色鮮やかな森や山々が西陣織金襴で表現された3 反の反物は、2018 年開催のパリ装飾美術館の企画展「ジャポニスムの150 年」で展示されました。
デザインを手がけた「炭酸デザイン室」は、デザイナーの水野智章さん、水野若菜さんよるデザインユニット。[光る山]に描かれた風景は、若菜さんの実家である「立木観音 立木山安養寺」(滋賀県大津市)と参道、それを取り巻く立木山の自然がモチーフです。
もともと、自分の周りにある身近なものをテーマにすることが多いというお二人。
「ある日、今描いている線はどこから来たのか?と考えたときに、それは自分が小さいころから見てきた道や山、植物や周りの家々など、記憶の中から描きだされていると気づきました。デザインと向き合う上でそういうものの近くにいたいという思いから、活動拠点を滋賀に移しました」と若菜さん。
「暮らしの中からインスピレーションを得るために、あえて自然豊かな環境に身を置くようにしています」と智章さんも応えます。
春・夏・秋の三部作からなる[光る山]は、緑・紫・赤で季節ごとの立木山を描いています。
炭酸デザイン室の特徴である鮮やかな色彩、緻密に描きこまれた草花や木々に生命力を宿らせるダイナミックなデザイン。そこに西陣織金襴の伝統技術が融合し、エキゾチックな煌めきを放つ独創的な反物が完成しました。
生家が寺院のため、西陣織とは浅からぬ縁をもつ若菜さん。
「実家の本堂には当たり前のように西陣織の織物があり、それが西陣織だと認識する前から身近な存在でした。ですから、西陣岡本さんからお声がけいただいたときも、自分のルーツである立木観音、立木山の景色が脳裏に浮かびました。[光る山]では、立木観音の云われである “光る霊木”を金糸で表現しています」
炭酸デザイン室の現代的な表現と西陣織の伝統技法が結びつくことによって生み出された世界観の広がりと新たな創造─ その革新性は見る者を魅了します。
パリ装飾美術館で開催された「ジャポニスムの150 年」展は、2018 年の日仏友好150 周年を記念した国際的なイベント。パリ装飾美術館が1860 年代から現代までの間に収蔵した日本コレクションと、ジャポニスムの“今” を表す特徴的な作品が日本から選出されました。
選考の段階から「なぜこんなものが出来るのか」「ミラクル!」と驚嘆された[光る山]。現代の日本のものづくりや自然に対する真摯な姿勢が表れた作品として評価され、約3カ月半の開催期間中、2000 ㎡を超える会場で三宅一生氏や田中一光氏など、日本を代表するデザイナーの作品とともに展示されました。
フジエテキスタイルは、反物として誕生したこの作品を多くの方に鑑賞していただくために、3サイズのテキスタイルアートにしました。
受け継がれてきた技術、日本の精神性が織り込まれた作品を、ご自宅やオフィスのさまざまな空間でお楽しみください。