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吹き抜けをシンプルにドラマティックに

布を学ぶtextileStudy no.19 

「札幌市個人邸」
設計者:堀部太建築設計事務所
©佐々木育弥  

「プライバシーを確保した明るい空間」をコンセプトに建てられた、札幌にある個人邸のLDK。
吹き抜けの大きな窓は出窓のように跳ね出した形状で、窓に沿って設けた階段を上り下りする際に「外を感じる」造りになっています。

窓辺にかかるのはフジエテキスタイルの[モルン]。スウェーデン語で雲を意味する名前のついたテキスタイルです。

[モルン]はタテ3mのパネルデザインで、トップからボトムにかけて透け感がなくなっていく透過のグラデーションデザイン。
その名の通り雲のように、近くで見ると数ミリの白いドットが移り変わっていく視覚的な遊びのあるテキスタイルです。

モルン

「均一柄のカーテンでは階段の昇降時に変化がないと思い、不均等な動きのある柄を探した結果モルンを採用することに」と語るのは設計者の堀部太さん。
高さ約5mの大窓に合わせて3mレピートの[モルン]をタテに2枚接ぎ合わせ、下半分を天地逆に使用しています。
「下部は透明度が高く外構が見え、階段を数段上がると不透明度の高い部分が目線の高さになって隣家との視線が遮られ、さらに数段上がると上部の透明度の高い部分から空が見えるように計画」されており、吹き抜けの窓辺がドラマティックな空間に。

(c) 佐々木育弥

施主様から「レースカーテンの透明度が変わっていくさまが美しく、階段の上り下りが楽しくなった」との嬉しいお声をいただいています。

美しい光沢感が採用の決め手となったドレーパリーの[ウスライ]は、ガラスや氷を思わせる質感が特徴のサテン。

「跳ね出した三方の窓を光沢のあるカーテンで囲うことで階段が際立つと考えました」。厚みを抑えたしなやかなテクスチャーのため、これだけ大きなサイズの窓にかけても重たい印象にならず、美しいドレープを形づくって
います。

© 佐々木育弥


「広い空間に工夫した使い方をしてもらえてうれしい」と語るのは、[モルン]のデザインを担当したテキスタイルデザイナーの森山茜さん。

スウェーデン・ストックホルムに拠点を置き、欧米や日本で活動する森山さんは、日本のテキスタイル界で今もっとも勢いのある若手デザイナーのお一人。
オランダを拠点に活動する世界的なデザイナー、ペトラ・ブレーゼのもとで学ばれた経験を持つ森山さんが生み出す、オリジナリティと存在感に溢れたテキスタイルは、空間を変える力があると高く評価されています。

森山 茜さん

特定の空間のためのオーダーメイドの生地を手がけてきた森山さんにとって、フジエテキスタイルとの協働による[モルン]の製作は、初のマスプロダクツへの挑戦でした。

[モルン]を通して差し込む自然光が、空間にやわらかく満ちた施工写真を見て「時間帯や角度によっても透け感や見え方が変わってきそう。実物を見てみたい」と森山さん。
「小さなサンプルと実際に納めたものの印象が変わるのもテキスタイルの魅力だと思います」。


取材協力:堀部太建築設計事務所
     森山茜さん

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