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生地見本帳をリサイクル 障がいのある方が通う、就労移行支援事業所でスタート

生地は実物をみて決めたい—―
クッションやカーテン、キッチンクロスやベッドリネンなど、布ものを選ぶときは、実物に触れて決めたいという人は多いのではないでしょうか。

フジエテキスタイルのコレクションも、実物で色味や厚みを感じて選べるように、「見本帳」というカタログを製作しています。
台紙にカットされた生地見本が貼られ、さまざまな厚み・色柄の中から、インテリア空間に合うテキスタイルを探す楽しさがあります。

見本帳の中はこんな風になっています
今年の春に発表、新カタログ

その「見本帳」は、約3年に1度、新作コレクションが発表されるたびに入れ替えをします。
ショールームはもちろん、インテリアショップや住宅メーカーなど、多くの場所に「見本帳」が置いてあり、その全てを新しいものへ交換する時が、数年単位でやってくるのです。

想いを込めて製作したはずの「見本帳」が、古くなった途端に廃棄物になることは、とても心苦しく、環境に影響がないとは言えません。
そこで、何かこの見本帳で出来ることはないかと、フジエテキスタイルは今年から旧見本帳を“リサイクル資源”とする新しい試みを始めました。

まず、以前から不要になった布を回収・活用いただいている「ZAMPU PROJECT」の尾田春菜さんに相談を持ち掛けてみました。

「ZAMPU PROJECT」とは、インテリアで廃棄される布に着目した尾田春菜さんが立ち上げたプロジェクト。オーダーカーテンや特注家具などのインテリアアイテムの製作過程でうまれる「残布(ざんぷ)=ZAMPU」をアップサイクルしています。
残布を使って、障がいのある方が働く就労支援施設や高齢者施設など、福祉施設への仕事の創出を目指しています。

すると尾田さんは、「就労移行支援事業所と協力すれば、リサイクルのための分別作業が出来るかもしれない」と交渉を始めてくれました。

資源を分別する作業をお願いすることになったのは神奈川県鎌倉市にある、「富士ソフト企画株式会社」と「就労サポートセンターねくすと」。
障がいのある方が仕事に就けるように、さまざまな仕事や訓練をする就労移行支援事業所です。

いずれも解体や分別を専門にする施設ではないため、フジエテキスタイルからテストのカタログを送り、見本帳とはどのようなものなのかを見て頂きました。そして、障がいのある方にとって難点の少ない方法を尾田さんと施設職員の方で検証し、本番に備えました。

いよいよ各事業所で作業がスタート。
「富士ソフト企画株式会社」では4人一組になり、生地を台紙からはがす人、紙を整える人などに役割分担します。

見本帳の材料はとてもシンプルで、紙・金属・プラスチック・布でできています。分別で一番時間がかかるのは、貼られた生地を剥がすこと。1枚1枚を手で剥がして、紙をリサイクル可能な状態にしていきます。

片手にギュッとまとめる、1枚ずつリズミカルに剥がす、素手の方が、軍手の方がやりやすい—―
一人ひとりが工夫を凝らし、1冊におよそ500枚貼られている生地サンプルをスピーディーに剥がします。

驚いたのは「就労サポートセンターねくすと」で、生地が大きさごとに分類されていたこと。剥がした生地もまだ使える、そんなサステナブルな意志が伝わってきます。

「分別をお願いします」と依頼した時には想像していなかった、施設のみなさんの知恵と丁寧さが、仕事に込められました。

「就労サポートセンターねくすと」さんにて
サイズごとに並べられた布

表装の部材にある金属やプラスチックも、資源ごとに分けて箱や袋に詰めます。分類された紙や金属の資源は、リサイクルセンターへ回収、剥がした布は「ZAMPU PROJECT」でリユースします。
従来は廃棄物となり焼却処分されていた見本帳に、新しい役割が与えられていきます。

見本帳1冊 分別後の姿
リサイクルセンターへ回収される紙資源 施設職員の方と。

作業はそれぞれの事業所で複数回に渡ってスケジュールされ、1回目で覚えたコツを2回目に生かしたり、利用者の方同士のコミュニケーションが生まれたりしていました。同じものを触って作業を繰り返すことで、愛着のようなものが生まれた人もいたかもしれません。
初回の分別を終えて、1度きりの関わりではなく、これからも無理のない量の仕事をお願いし続けることが、フジエテキスタイル、「ZAMPU PROJECT」、就労移行支援事業所、みなにとって意味のある活動だと感じられました。

フジエテキスタイルは、今後は見本帳を使う人にもこの活動を知ってもらい、より多くの人が関わって、この取り組みを続けていきたいと思っています。


協力:「ZAMPU PROJECT 」
     尾田春菜さん