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小林一毅が語る開発秘話 テキスタイルに魅せられて_前編

布を学ぶtextileStudy no.42

今年、フジエテキスタイルと初のコラボレーションを果たした小林一毅さん。長年、グラフィックデザイナーとして平面を中心とするクリエイティブに向き合ってきましたが、その創作の出発点は立体物、ことにテキスタイルにあるといいます。

今回は、そんな彼の営みの根源や向き合い方と共に、コレクション「STORY5」での作品について話を聞きました。

小林一毅
グラフィックデザイナー
1992年滋賀県生まれ。多摩美術大学を卒業後、(株)資生堂を経て2019年よりフリーランス。

2020年に子どもが産まれて以来、生活とともに働き方も大きく変わったと話す小林さん。会社勤めではなくなったこともあり、自由な発想で仕事と生活に向き合っています。
「育児と仕事を折半することが軸にあるので、仕事をするのは週に3〜4日。残りは子供と過ごします」。これまでは曜日で分けていましたが、この春からは幼稚園入園に伴い、時間で区切る生活を始めています。

「子どもとは今しかできない生活ができると良いよねと考えていて。それで保育園に預ける選択はしなかったのですが、かといって育児をどちらかに押し付けるわけにもいかない。そこで時間を半分にする、というやり方でやってきました。なかなか難しさもありますが……幼稚園入園はとても大きな変化となりそうです」

生活や子どもとの時間があるからこそ得られるインスピレーションは、さまざまなお仕事に生きているそうです。

独立して5年目。大切にしたい仕事はずっと変わらないと話します。

「中小規模の仕事を尊重したいというスタンスはずっと変わりません。これから事業を立ち上げたり、お店をつくることって、ものすごく決定に勇気が要りますよね。もちろん大きな企業の案件の方がフィーは大きいのですが、それよりも、自分たちはこういう生活をしていきたいとか、こういう仕事をしたい、と考えている人たちのために、デザインを提供できる人間になりたいと確信しています」

そんな小林さんが、フジエテキスタイルと出会ったのは約2年前。ちょうど、ファブリックの仕事をしたいという気持ちが膨らみ始めていた頃だったといいます。

「元を辿れば、美大に行ったのは、スポーツチームのユニフォームを作りたかったから。でも当然、スポーツユニフォーム専門の学科はなくて。振り返ると、大学に入ってからよりテキスタイルを意識するようになりました。日本の家紋や、文字や、模様といったにすごく惹かれて、それらを意識した平面を作ることが多かったんですが、それはいずれ自分がファブリックやファッションの領域に進むという前提がなんとなく頭の中にあって、将来設計の上で必要なスキルとしてやっていたんですよね」

「ろくろ舎(福井県鯖江市の挽物工房)主宰の酒井さんに、『一毅くんは立体に適性がある平面を作ってるよね』と言われたのがきっかけで、確かにそういうアプローチもありなのかもしれないと思い始めました」

2019年に中目黒のdessinで開催した〈Between Black & White〉という展示では、ファブリックを意識したグラフィックを作り、ファブリックの仕事を本格的にやりたいと考える大きなきっかけに。

「子どもが産まれたことで、子どものために何か作れるものはないかな、という発想で色々調べていくと、グラフィックデザインの平面領域でおもちゃを作っている人が、意外とたくさんいるということがわかって。プロダクトのように機能でものを売るのではなく、もう少し情感のある、魅力でものを売るジャンルだから、グラフィックデザイナーのスキルが応用しやすい側面があると思います」

小林さんは2022年、実際におもちゃを制作し始めたことを機に、展覧会〈Play Time〉を開催。そこからオブジェ制作や立体プロダクトの開発など、さまざまなプロジェクトに参画しています。

記事続編では、実際に フジエテキスタイルと進めたテキスタイル開発の背景をレポートします。



取材協力:小林一毅さん

photo: Tomohiro Mazawa

小林さんとの新作が収録:「STORY vol.05」 


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